健康のための気功(後編)
前編に引き続き、健康を目的とした気功について、具体的なやり方について説明します。
目標は小周天ができるようになることに設定します。小周天のやり方は様々な動画で詳しく解説されていますので、具体的なやり方はそれらをご参考にされるのが良いと思います。ここでは、初めて取り組む方に向けていくつか参考になりそうな事柄を紹介します。
1.小周天とはなにか
まず小周天(ショウシュウテン)という言葉が意味することですが、これは、気のエネルギーを身体の前側(腹側)と後側(背側)を円を描くように上下に動かすことを指します。この時、身体の左右の中心、背骨に並行になるまっすぐな線を正中線(セイチュウセン)と言い、この正中線に沿って気を廻(メグ)らしていきます。
気の回し方は二通り有ります。第一の方法は、気のエネルギーを下腹部から身体の前を通って上に上げていき、頭のてっぺん(頭頂(トウチョウ))から今度は身体の後側を下に降りていき、肛門付近(会陰(エイン))の前を通って前側にまわしていく方法です。
第二の方法は、この逆回りで、会陰から身体の後側を背骨に沿って気のエネルギーを上げていき、頭頂から今度は身体の前側を下に降りていき、下腹部へ回していく方法です。
最初は多くの場合、直感的に自然な感じを受けることもあって、前側を上げて後ろ側を降ろすやり方を学びます。
小周天があれば、大周天(ダイシュウテン)もあります。大周天はやや上級者向けでもあり、また外気功を目指す人の必須科目ですが、普通にご自身の健康が目的であれば、小周天ができれば十分と思います。
2.気を廻らす方法
次に気を廻らす方法について説明します。「気功の初歩」に詳しく書きましたが、気功の技術は基本的には全て頭の中で作るイメージから始まります。ですから、気を身体の周りを廻らすという場合も、身体の周りに気を廻らすイメージを持つことから始めます。
即ち、最初から何らかの感触(気感(キカン)と言う)を持とうと頑張る必要はありません。とにかく、意識を廻らすことに集中します。
意識で想像するだけでは臨場感が不足しがちですので、手のひらを向かい合わせて気の球を作り、気の球を両手で抱えた状態で、身体の前側を下腹部から頭頂へ腕を動かして気の球を動かす動作を加えると良いと思います。
背中側に腕を回すのは無理ですので、背中側は気の球がスーッと降りていくというイメージだけで大丈夫です。
また、最初の内は、腹側だけで気の球を頭頂と下腹部の間を上下させるだけでも問題ありません。気の球を動かすことで、気のエネルギーを動かしているという感覚に慣れることが大切です。
そのうち、気の球を動かすと、何か温かい空気が移動していくような感覚が出てくるかもしれません。それは気感という感覚で、気のエネルギーを温度と触覚で感知している状態です。ここまで出来るようになると、気のエネルギーの存在を実感できて臨場感も急速に高まると思います。
気の球を廻らす方法がある程度できるようになったら、今度は意識だけで気を廻らすやり方を目指してみるのも良いでしょう。気の球を扱えれば、健康のための気功としては十分です。ここではもう少し上達したいと思う方のために書きます。
まず、下腹部の丹田(タンデン)と言われる場所、おへその下3センチくらいの場所に、暖かい気の球がある、と想像します。気の球があると決めて、それを感じようとする、というのが正しい感覚です。気の球がどんな感じかは既に感覚ができていますので、それが丹田の当たりに有って、暖かい感じがする、という感覚を感じようと集中します。
この時、集中する前提として、身体がリラックスしていることが大切です。肩に力がはいった状態で、必死に集中する、ということではありません。リラックスして、感覚を丹田に集める感じです。最初はそれができなくても構いません。出来たと決めて、今度は身体の前側を少しずつ上に向けて気の球を動かしていきます。
実際は、丹田からスタートして、おヘソの辺りに意識を向けて感じてみる、次はお腹の辺りに意識を向けて感じてみる、という具合に、意識を集中させる場所をずらしていく感覚です。こうして胸、喉、口、鼻、頭頂という具合に意識を動かしていきます。出来るようになったら、意識とともに気の球がそれぞれの位置にあることを感じようとします。
同じように、今度は身体の後ろ側を上から下に向けて意識の集中させる場所を移動させ、そこに気の球があることを感じようとしていきます。背中側は背骨の中を気の球が移動していく、という風に感じるとよいと思います。
背骨のを感じるのは普段は余りないと思いますが、少しずつ練習すると、背骨を感じることが出来るようになります。こうして、会陰まで降ろしてくれば、身体を一周したことになります。
3.男周りと女周り
最後に、おまけの知識として、男周りと女周りについて説明します。
男周りとは、気のエネルギーを背中側を上げて、腹側を下げる回り方を言います。
女周りとは、気のエネルギーを腹側を上げて、背中側を下げる回り方を言います。
どうしてそう呼ぶのかと言うと、男性は男周りの方向で気が回っている人が多く、女性はその反対だからです。
小周天という練習を意識的にしなくても、気のエネルギーは実は小周天の回路に沿って流れています。その流れる方向が男女で逆回りになっているのです。
髪型が実はそれを反映していて、女性は頭から背中側に髪を流す髪型、男性は背中側から前にちょんまげを結う髪型となっています。
自分が男周りか女周りかを確認する方法があります。
それは、例えば男周りなら、男周り方向に背中側からエネルギーを上げて、腹側に降ろすという風に手を何回か動かし、筋力反射テストをして強ければ男周り、弱くなれば女周りです。手を動かすのは自分ではできませんから、誰かにやって貰います。そしてOリングテストの要領で親指と人差し指で輪を作り、もう一人に人にその輪を開くように力を入れてもらってテストをすれば分かります。